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2010-12-18

ユーフラテス展 ギャラリートーク2 に行ってきた。その1
インプレッション

東京銀座のgggで開催中のユーフラテス展。その付随イベントのギャラリートークに行ってきました。

いつもこういうイベントに行っては、メモって、ブログにまとめようと思っているのですが、
ちゃんと書かないとなぁ、その量を考えて、逆に気が重くなってしまって、
書きたいネタだけが段々とたまっている状況です。
細かい部分も書いておきたいけども、
今日はとりあえずの簡単な感想だけでも書いておこうかと思います。

トークの流れとしては、
ユーフラテスの簡単な紹介から始まって、現メンバーの6人と予定新メンバーの個々のトーク。
各人はこれまでの作品と研究テーマの紹介。

予定時間の1時間以上オーバーと、多少のグダグダ感はありましたが、
ユーフラテスの各人の雰囲気とか、作風とかが見えた事、
それと、作品制作の流れが興味深ったので、文章としてまずは感想をまとめておきます。

彼らの特徴としては、”研究”が作品制作のスタート地点になっている事のようです。
クライアントワークも、自分たちのプライベートワークからの発展が多いとの事。

また、研究テーマも各自の面白さの理由を考えていき”言語化”する事を一つの目標にされているようです。
これは佐藤雅彦さんの影響が大きいのかなと思います。
そのテーマも映像に直接関係しているというよりは、
現代アートのネタばらしを聞いて、ハッとするような、また、
よくデザインされた製品をみた時や、
なるほど~、と感嘆するような、
そういう感覚の理由に興味を持たれているようです。

脳科学や理科の実験や、一見映像とは直接関係しない物を映像作成のヒントに使っていること、
こういう話を聞いて、思い浮かべた事は2つ。
横井軍平さんの枯れた技術の水平思考と、異文化交流。

理科の実験を改めて映像化する、なんて、まさに枯れた技術の水平思考だし、
他の分野で使われている常識的な事が実は、別分野ではスゴい発見のように見られる、
これは良く聞く話で、彼らの場合は、ヒントやインスピレーションを映像にしていく。
イデアの工場も、工場の動きの面白さをヒントにブラッシュアップして映像化している。

研究をしていること、異文化交流をしている。
映像制作グループの話というより、
何処かの開発主体のメーカー系ベンチャー企業の話にも聞こえました。

見せてもらった映像の中には、映像というだけではなく、
今日日のインターフェースの研究にも通じるものがあって、
ゆくゆくはそういう方面からも声がかかってくるだろうな、と思っています。

現在の研究は映像を作るためのようですが、
そのテーマや視点が、感覚的な映像表現の枠から
もっと大きく俯瞰的な位置にあるので、
そのような広がりがあるのだろうと思います。

ただ、それだけの広がりを持っていることに、
彼ら自身は気づいているのかな、と思える発言もありましたが、
そこは意識して、映像表現だけではなく、
もう少し広い分野へも事業分野を広めていってもらいたいなあ、と、
そして、そういう彼らを見てみたいと思います。

ピタゴラスイッチや0655、2355、少し前に開催された『これも自分と認めざるをえない展』など、
佐藤雅彦さんが中心となっているものを見ると、
ネタばらしの時に、ハッとする事が多いです。
こういう視点で映像や作品を作らているからなのでしょうが、
こういう感覚は映像だけでなく、現代アートでも感じますし、
工夫された製品やデザインの中にも見られます。
何か共通項があって、それを何とか形容詞が付けられるように、
言語化を研究テーマにされている。
映像を軸にしているものの、その共通な何かをヒントにしているから、
その映像にも強さがあるのだろうと思います。

短期的な目標設定で、最近軽視されてしまいがちな、哲学というのか、
時代が変わっても通じる核があると強くなる一例。
そんなところでしょうか。

科学的な裏付けもされているようで、
そういう活動から、映像に対する気持良さやゲームの面白さが
定性的定量的に解明されていく事へも期待したいです。

ダムタイプのようなアート志向ではないかも知れませんが、
ダムタイプの結成当時の感じって、実はこんな感じだったのかも、
ちょっと思ったりもしました。

あと、面白さ解明へのヒント、個人的な回答の第一歩は、
なぞかけ、かなと思います。
ネタふりと解、そのギャップとなるほど感、カタルシス。
映像、現代アート、製品やデザイン、どれも、
これまでハッとしたものは、その枠組で考えられそうには感じますが、
さてどうか。



     

2010-11-02

佐藤雅彦ディレクション
『”これも自分と認めざるをえない”展』 を体験してきた
その3

前回の続き。

  展示会自体も明日で終り、だったかな。最終週は開館時間を延長されたようですね。こういう内容のブログは展示会が始まった時の方が良いとも思ういつつ、でも一方で、恒久的に残りうるとも考えていて、どこかの誰かが参考になり、何かになり、してくれたらなぁ、と期待している訳ですが、さて、どうでしょうか。
  ま、中途半端になってしまうのも何なので、とりあえず。

16.After Image
  大きな写真が2枚。右手の手首から肘までの間がなくなっている初老の方。手首から先の姿勢が2枚では少し違っている。
  力のある写真だと感じました。モデルになっている方は肘から先を事故で欠損されてしまったそうです。その方にインタビューをして、幻肢がどのような状態なのかを聞き取り、CGにて後から合成をしているそうです。ただ合成して、欠損部分全てをCGで再現するのではなく、手首から先のみを再現していることで、初見の違和感だけでなく、モデルさんの視線の強さも相まって、語りかけられるように感じました。あまり立ち止まってみている観客がいなかった事が少し残念でした。
  
17.Home of the Heart I
  床面が4mぐらいの四方でコンクリートがむき出しになっている。そして、その中心に、いくつかの穴の開いた直方体のコンクリートの塊が置かれている。一見するとコンクリートだが、穴の位置や大きさ、表面の状態などと観察すると、人間の胴体を抜き取った形状になっている。
  前の『After Image』と同じく、あまり人が注目していなかったように思います。どちらも佐藤さんの名前が制作者に入っていないので、雰囲気が他ものとかなり違うようです。しかし、これもよくよく見ていると、どうやって作ったのかな、とか、型取りしている風景を想像してクスリとしたり、とか、考えを巡らせていくと面白い作品だと思います。いつもは表面として意識している体が内面になってしまうと、分からないものですね。


18.2048
  透過性のスクリーンの前に、小さい机。指揮者が使うような大きさ。そこに覗き窓。音声にしたがって覗き込むと、認識しましたとの音声。すると、スクリーンに映し出される眼のような同心円。円は01の列。音声の指示で、机に設置された黒板消しで、スクリーンをなぞると、消える01の同心円。音声で、「しかし、まだ、あなたです」というようなアナウンス。もっと消していくと、「もうあなたではありません」と音声。入場前に登録した虹彩の情報を使ったインスタレーション。
  虹彩情報というのは、日々の体調によって実は変わっているそうです。しかし、個人認証としては、その体調による振れ幅を吸収してしまうほどに情報量が多く、多少の欠損があっても個人認証が出来るそうです。スクリーンに映し出された01の列は、おそらく虹彩情報から生成した01列だと思うのですが、思った以上に消しても大丈夫なことに驚きました。生体情報の特に強い情報量をもっている虹彩を使って、まさに、その強さを明示的に表現したものでした。
  
19.MICHELLE: FIND THIS MAN
  順路通路の途中、真中に、江戸時代の掲示板のように写真のような、写実的な、外国人の顔が貼り出されている。キャプションに「FIND THIS MAN」とある。
  解説を見て、面白さが分かった作品でした。作品の肝となる顔は、実は切り貼りで作ったコラージュ。そして、各部品は、凶悪犯罪を起こした犯人の要素らしいです。それらを組み合わせて、最強な犯罪者を作っているそうですが、実際には、その顔の人間は存在しない。凶悪犯罪者というイメージが強調されて、レッテルのような顔になっているけれども、実際には存在しない。そんな顔のミシェルを探せ、と言っている。現代芸術的ですが、こういうの好きです。しかし、皆さん見事にスルーされていました。大竹伸朗というだけでも、足を止めても良いと思うですが…。


20.トポグラフィカル・アナロジー
  白黒の写真が4枚。どれも解体前の建物の壁やカーテンを写したものらしい。傷やほころびなど、日常的に使われていた感じが残っている。
  遠目から見ていると、鉛筆のデッサンっぽく見えていたのですが、写真とのこと。まっ更な状態ではなく、使われていく中で付いていく汚れや傷、そこからそこでの生活を思い浮かべて、という作品らしいのですが、いまいちピンと来ませんでした。確かに、どういうように使われているかが、その結果から分かるというのは、そうなのですが、僕には面白みを見いだせませんでした。

21.新しい過去
  タッチパネルで名前と好きな食べ物を平仮名で入力する。そのタッチパネルの奥に、古い感じの机と椅子がある。机の上には、テープレコーダ。椅子に座ると、スイッチがガチャ!と入って、巻き戻し。再びガチャ!で再生。幼い子供の声で、自分の名前や好きな食べ物を使った音声日記。
  整理券などなく、とりあえず人が並んでいました。1時間ぐらい待ちました。作品名にあるように、自分が経験していない過去を聞かされて、さて、どうか、というものですが、自分の名前が呼ばれても、これはあまりグッと来ず。自分の声や映像が使われていれば、かなり印象は違ったかも知れませんが、それは技術的に難しそう。

22.佐藤雅彦さんに手紙を書こう
  タブレットの上に紙をおいて、ひらがなだけで佐藤雅彦さんに手紙を書きます。原稿用紙一枚ぐらいの量。キャリブレーションのような、チェックマークを書いたり、ペンの置き位置に注意したり。書き終わったら、ポストに投函する。そして、帰りの出口前に、佐藤さんからの返信が届いている。
  これも見事にヤラれた作品でした。タブレットを使っている時点で分かる人には分かると思うのですが、実際にペンで紙に字を書き、それが目の前にあること。そして、実際にポストに投函する。この二つの作業が、返信に対して、勝手なイメージを作っていました。説明員の人に、「本当にすぐに返事が来るんですか?」と聞いてしまいました。行為と結果の連続性というか、自分の行為から結果を想像する際、今回は見事にミスリードしていて、ヤラれた感満載でした。手品と同じですよね。視点や注目をそらす方法。



とりあえず、まとめらしきもの
  個々の感想は皆んなそれぞれ、違うのでしょうが、キュレーターや佐藤さん自身の解説を聞きながら体験できるとまた違った印象になると思います。よく、「作品の解説はしません、鑑賞した人それぞれで感じてもらえれば」なんていう方もいらっしゃいますが、僕のように感度が弱い人にとっては、解説があった方が楽しめるだろうし、そこからの深みも出てくると思います。特別講義を受けても感じましたが、佐藤さんは非常にサービス精神の旺盛な方なのでしょう。それなりに観客に納得してもらいつつ、でも、いじわるな部分もあったり、そこもサービスなのかも知れませんが。海外の方が鑑賞され、感想を知人の方に「スマート」とおっしゃっていたのが耳に入りました。まさに、スマートな展示会で、それなりに、スマートに鑑賞して、面白みや楽しさに深みが出る展示会だったと思います。



      

2010-10-28

佐藤雅彦ディレクション
『”これも自分と認めざるをえない”展』 を体験してきた
その2

前回の続き。

7.覗かれ穴
 壁に穴が空いていて、その穴を覗くと夏の浜辺の写真が見える。水着の人が沢山いる。覗いている時には、何らよく分からないが、見終わって、他の人が穴を覗いている様子を見て、納得するインスタレーション。作品の内容を知らないで、体験して欲しい作品です。
 誰もいないときに、並ばず体験できる、と、覗いてみましたが、その段階ではよく分かりませんでした。何だコレ、と思い少し離れて、他の方が覗いている様子を見て、納得でした。これは考えようによっては非常に恥ずかしい。普段、誰かと話している時も、相手の視線で、自分の髪型を気にされているかな、とか、後ろで何か起こったのかな、とか、どこを見ているかで、その人の思考とか、意識の断片が分かることがありますが、この作品は直に自分の視線を周囲にさらけ出してしまうので、知らずに覗いた後で、答えが分かると、ヤラれた感と恥ずかしい気持ちが出てきました。

8.Outline to go
 スクリーンからロープが出ている。スクリーンの前に経つと自分の輪郭がスクリーンに投影される。ロープを引っ張ると、毛糸のセーターをほぐしていくように、連動して輪郭線が引き出されたかのように消えて行く。輪郭線を引っ張り切ると、輪郭線の長さが表示される。そんなインスタレーション。
 少し奥まった場所にあるので、スルーされていましたが、気持ちいい感覚の作品でした。感覚的には、輪郭線が本当にロープのように思えて、毛糸のセーターをほぐしている時の気持よさを感じます。また、スクリーンへの輪郭線の写り方によって、意外と長さが変わることも少し驚きでした。

9.lost property わすれもの
 普通のドアがあり、横に小型のライトも置いてある。その特殊な光をだすライトで、ドアを照らして走査すると、模様のようなものが見つかる。空き巣の証拠や照合に使う耳の跡らしい。警察からの出展のよう。インスタレーションになるのかな。
 この光がどういうもので、どの体液を検出しているのかは、分かりませんが、こういう証拠集めもされている事を始めて知りました。また、耳の跡で個人を特定できるという事、そして、そういう研究もされていたのだなぁ、と。地味な作品ですが、話の小ネタとして、面白いと思います。

10.休憩所

 テレビと長椅子がおいてあり、テレビには誰かの生涯を追ったドキュメンタリーのような映像が流れている。一見、普通の休憩所のように見えるが、会場の最後の方でネタばらし。監視されているということと、気を抜いた時の自分の態度が映像化されている。
 これは初見で気づく人は殆どいないと思います。手足を伸ばして、休憩していると、「何?あの人、態度デカイ」と裏で指をさされています。少しやらしさを感じますが、嫌いではないです。今回の展示方法、それ自体も面白いのですが、ネタばらしの映像に使われている映像も、幾何学的な気持よさがあります。
 パーソナルスペースのようなものを画面に表示して、他人との距離に応じて、スペースの形状を変えていくアルゴリズムは同じだと思うのですが、動きを伴う場合、スペース境界線の変化が気持ちいい。映像としての楽しさもありますが、個人のパーソナルスペースの情報を加えられると、もっと別な感じ方になると思います。脳波で自動的にスペースを設定する事も出来るかも知れません。ARアプリにも応用できそうな気がします。映像表現に留まらず、その先の応用というか、ネタツールにもなりそうです。
 人の認識は天井のカメラを使っているようですが、単純な色認識ではなく、赤外線カメラを使っているのかな、と見ましたが、さて。

11.ふるまいに宿る属性
 入場前に登録した腕の動きを再現すると、自分もしくは、自分に近い動き方をした方の名前がスクリーンに投影される。
 単純に凄いと思いました。何気なく腕を動かすと、本当に自分の名前が出てきました。逆に、意識して、違った動きにすると、名前は出てこず。こういう研究をされている人も要るのだなぁ、と、そして、その検出がそれなりに出来る、というのはスゴいなぁ、と。
 腕の動きを検出する際、リモコンのようなものをもって、腕を動かすのですが、どういったセンサーを使っているのか、その検出情報から何を抽出しているのか、そういう技術的な面でも興味を覚えました。KDDIの研究所が参加していて、研究らしいなぁ、と思う反面、どこに応用を考えているのだろうか。

12.頭の中の散らばり方
 著名な方のパソコンのデスクトップをそのまま再現しての静的な展示。
 パソコンのデスクトップって、その人の整理の仕方や人柄のようなものが見えて楽しいです。また、精神状態も反映しているかも知れません。忙しいと、連番の「新しいフォルダ」や「tmp」フォルダがたくさんあったりして。この展示も、何となく言われてみると、そんな雰囲気を持っているように感じました。使っているパソコンもフォローしているのかな。

13.金魚が先か、自分が先か
 解説や事前知識なしで体験して欲しい作品。部屋に一人で入る。洗面所のような内装。目に付く鏡。鏡に写っている金魚。でも何か違和感がある。何だ?というような作品。
 これはタイトルからして、まさにそう。解説文の中にも少し書いてあったけど、実際に体験してみて、ほう…、となります。映画なんかでも、たまにこういう描写があるのですが、意外と違和感を感じない。不自然な事なのに、別なところに意識が行くと、脳内でフィルターがかかってしまうのかもしてません。仮に、金魚がいなかったら…。注意をそらす何かがあること。視線誘導で、本質的な物事から、思考をそらしてしまう。見えていること、今回は、逆に、見えていないこと、でしたが、センサーとなる眼ではなく、実は脳が行っているんだな、と改めて思いました。
 しかし、この展示、地震が来たり、イタズラされたりしちゃうと致命的になるかも知れませんし、その設置は、かなり大変だっただろうな、と想像します。


以下の作品は、また後ほど

14.心音移入
15.1組・2組・3組・4組
16.After Image
17.Home of the Heart I
18.2048
19.MICHELLE: FIND THIS MAN
20.トポグラフィカル・アナロジー
21.新しい過去
22.佐藤雅彦さんに手紙を書こう







      

2010-10-27

佐藤雅彦ディレクション
『”これも自分と認めざるをえない”展』 を体験してきた
その1


 この展示会は高い関心をもっていたけれど、なかなかタイミングと勢いが出ずにズルズルと会期終了間際になっていました。前日に開催された佐藤雅彦さんのトークショーと特別講義を聞いて、非常に刺激を受けて、これは展示会を見ておかないと、と思って、次の日、たまたまタイミングがあった事と雨が振っていて入場者も少ないかもと、少し期待をして、覗いてきました。実際は、覗いたというよりも、午後まるまる使って、見倒してきたというのが正解なぐらい、楽しく、刺激的で、知的なニヤケをさせるような、そんな展示会でした。

まずは、全体を体験しての感想

 やはり、自分の好みがあって、ちょっとよく分からないものもあったけれど、全般的に見たり、体験したりして、ネタばらしの解説を読んで、ヤラれた~、って事が多かったと思います。そして、解説を踏まえた上で、再度展示に戻ってみると、確かにそうで、そして、新たに感動というか、感銘のようなものを感じました。

 このネタばらしというのが、僕は結構好きで、現代美術と呼ばれる分野の展示会では、それを読む事が前提となっているような気がします。逆に、それを読まないと、よく分からない、というのが正直なところ。作品だけをみて、自分なりに、そういう事か~、と思えるような”眼”がほしいものだなぁ、と思いつつも、大体の所が、よく分からない作品がほとんど。解説を読むという楽しみ方もありだと思うけど、解説なしでも楽しめるような感覚が欲しいものです。

 それと、こういう少し考えないと楽しめない展示会の場合、観ているお客さんの反応も興味深いものがあります。特に、今回は属性がテーマになっていて、そういう意識があったのからなのだろうけど。体験型の作品で、整理券が出ないものは1時間とか、待たないといけない。その時の各自の時間の潰し方とか、立ち姿とか、そういうのを改めて意識して見てみると、各自それぞれ個性があるものだと思いました。壁にもたれたり、脚をクロスさせたり、ひたすら友達としゃべっていたり、僕みたいにケータイを見つめていたり。

 少し残念だなと思ったのは、学生さんの一団に遭遇したわけですが、彼らの大声での感想が、非常に浅いなぁ、と感じた事。『指紋の池』を見て、「キモ!」とか、「ナニコレ!ナニコレ!」って、興味を持つのはいいのだけど、DQNってこういう態度のことか…、と悲しくなりました。哲学的になれとは言わないけれど、もう少し深く考えてほしいな。反応が脳まで行かずに、眼球で返って来ているような反応は、見ていて将来が不安になりました。これは少し余談。

 さて、個々の作品の感想を以下に。


0.展示会を楽しむための4つの準備
 名前、身長/体重(数値は表示されません)、虹彩、腕の動きを登録します。
 名前とか、身長とかを登録するのですが、OK/キャンセルのインターフェースボタンもシンプルになっていて、これも一つの作品のように見えました。この説明だったか、「本名を使うと、より結果にグッと来ます」との表現が、面白いなぁと思いました。確かに、本名を使うとグッと来ました。


1.指紋の池
 自分の指紋を画面に放流するインスタレーション。
 これは事前に何かの記事で、「一度池に放たれると、どれが自分の指紋か分からなくなるが、もう一度呼びだすと、指紋の群れの中から、自分の指紋が戻ってくる」というような説明を読んで、この展示会の趣旨をよく表しているなぁ、思いました。そして、そのイメージが記事だけで浮かんできて、これは、キテる作品だなぁ、と思ったわけですが、実際は、指紋の放流場所と離れた場所に群れが移動していて、ひょこひょこ頑張って泳いても、群れには届かず、とりあえず回収しました。少し期待が高かっただけに残念でした。


2.足形付土版
 どこかで発掘された子供の足形を付けた土版の展示。
 これはこれで意味があるし、そういう子供の足形をとっていた歴史を考えると、感慨深いものなのに、展示されている場所がちょっと悪い。特に、『属性のゲート』が混んでいると、人にまぎれて気がつかない人も多いんじゃないだろうか。地味だけど、こういうのにも興味を持って欲しいなぁ、と思いました。

3.属性のゲート
 カメラで体験者の顔を認識して、どう認識されたか結果に応じたゲートが開きます。3つの分岐があります。
 これは自分で体験するよりも、体験している人をずっと見ている説明員の方が楽しんでいるかも。技術的な内容が分かっている人は、機械に挑戦するような事をやっているし、笑顔をする人は、日本人には少ないし、自分の意図と違う反応があった時の、体験者の反応も面白いと思う。画像処理のレスポンスが悪いのか、ゲートが動くまでに時間がかかり、その時間が不安になっている人が多かったようです。認識中を示す表示なり、音なりがあった方が、ストレスなく対応出来たかも知れません。


4.Exactitudes
 パッと見で似た雰囲気の9人が1グループとして、かなりのグループの写真が壁に展示してあって、横に置いてある、グループ名のプレートを見て、そのグループが何のグループを見て、「分かる分かる~!」っていう感じのインスタレーション。
 解説をしっかりと読んでいないので、この各9人に対して、意図的なコーディネイトが入っているのか、不明ですが、まとまった9人が、あまりにも同列的で、ちょっと楽しめませんでした。

5.属性の積算
 身長を測る、体重を計る、という2段階を踏むことで、情報を絞り込んで個人を特定していく。そして、その絞り込みの過程を映像として表示するインスタレーション。
 初見、身長の計測と影の認識をしているカメラは同じものかと思っていたのですが、身長は別のカメラで計測しているようです。認識された個人はリアルタイムで、体験者の影の上に映像として表示されるのですが、情報の認識結果が少しずつ表示されていくので、その間は、動いちゃダメと思う人が多いようで、じっとしている方が多かったです。僕は試しに、その表示されつつある状態で動いてみたのですが、上手くトラッキングしているようでした。こういう反応をみると、情報の提示の仕方による、人間の行動の制御って難しいなぁと感じました。

 この作品は最初に登録した名前が表示されるのですが、登録の名前をハンドルネームのようにされている人も多く、中には笑いを誘うものもあり、その名前が自分に表示されることにテンションが上がっている前述の若い人達…、そういう反応をみて、辟易しました。

6.座席番号 G-19
 小さな入り口から入ると、結構広いスペースに映画館の椅子が一脚、後ろの壁には座席図とそのシートの位置らしき強調。座ると映像が開始され、映画館の様子が写り、人々が着席していく。映像をベースにしたインスタレーション。
 整理券が配られていて、人数制限がありました。特に解説文がなく、説明員の方に確認しても、直接の解説はなかったです。カタログに答えはあったのですが、2度目でも分からず。一番モヤモヤした感じを残す作品だと思います。解説を見ると、自分の属性に対する挑戦のようなものを感じましたが、確かに、これは分からなかった。「でしょ?」って作者に言われるような。


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一旦ここまで。以下の作品は後ほど。思った以上に書けるものだ…w。



7.覗かれ穴
8.Outline to go
9.lost property わすれもの
10.休憩所
11.ふるまいに宿る属性
12.頭の中の散らばり方
13.金魚が先か、自分が先か
14.心音移入
15.1組・2組・3組・4組
16.After Image
17.Home of the Heart I
18.2048
19.MICHELLE: FIND THIS MAN
20.トポグラフィカル・アナロジー
21.新しい過去
22.佐藤雅彦さんに手紙を書こう