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2010-11-05

『レッドライン』を観てきた
7年かけた作画に見合うだけのドラマが欲しかった…



  小池健さんの初映画監督作品『レッドライン』を観てきました。小池さんと言えば、『パーティ7』のOPアニメスマアニメ3本『アニマトリックス』の『ワールドレコード』が有名なところですよね。分かりやすい画と独特な構図で、でも、気持ちいい動き。どれも短編ですが、作画のテンションは非常に高くて、注目のアニメーターでした。

高いテンションの映像だけど…
  入場が遅くなったせいで、導入を見れずに多少イライラしながら、椅子に座ってしばらくして始まった冒頭のレースシーン、段々とテンションが上がってきます。小池さんらしい感じの動きで、ブースター(?)が入った辺りからトランスチックな音楽も相まって、盛り上がって来ます。金田伊功さんとも、板野サーカスとも、また違った動きの気持よさ、ミサイルもカッコよく、これを求めていたのだよ、内心ニヤケながら画面に食い入っていました。ただ、今石洋之さんらしい動きも散見しましたが、どうも今石さんの動きは、ちょっと違う感じがしています。これは好みでしょうが…。

ドラマのなさ
  冒頭レースが終了し、一息つくと、色々とトーンダウンします。次の本チャンレースまでのしばしの休息的なドラマシーンが続きますが、これがどうも入っていけない。JPとソノシーの絡み、JPとメカニックの絡み、ロボワールドの動き、その他出場レーサーの紹介。とりあえず、繋げましたという感覚で、どれも深みを感じられず。話として、ここで説得力が出なかったからでしょうか、最後のレースにもイマイチ乗れない。最後のレースも個々のカットをみれば、よく動いているのですが、繋がりが上手くいっていないようでした。テンポは悪くないのですが、カットが飛びすぎているように感じました。ファンキーボーイやボルトンも結局、どうなったのか、説明がないまま。

脚本が悪いのか
  こういう説明の曖昧さや説得力の無さは、脚本がしっかりしていないからなんじゃないかと思っています。スタッフロールを見ると、「構成 榎戸洋司」、「脚本 石井克人 榎戸洋司 櫻井圭記」となっています。これまでの作品を思い返せば、榎戸さん、櫻井さん共に、実績があると見えます。ただ、各人がどの程度絡んでいるのか、最終的に誰がどの程度手を入れているのか、そこなのかな、と。おそらくは石井さんが取りまとめているように感じますが…。

石井克人的なキャラクター
  「© 2010 石井克人・GASTONIA・マッドハウス/REDLINE委員会」となっていることもそうですし、「企画原案 石井克人」、「原作・クリエイティブディレクター 石井克人」、「音響監督  石井克人」と石井さんづくしです。確かに、冒頭の子供と父親のやり取りのウザさ、泣いている軍人デイズナ弟とか(殺し屋1か!)、スーパーボインズとか、観ていて痛いキャラクターが結構います。トラヴァとか言われても、知っている人はかなり少数なんじゃないでしょうか。僕の知らないスターシステムが他にも採用されているようにも見えます。
  こういうキャラクター設定を面白いと感じられれば、映画自体も楽しめると思います。ただ、やはり、奇を狙ったキャラクターはよっぽどでない限り、作品の中で生きないと思います。石井さんが監督された過去の作品は幾つか観ていますが、似た様な感想を持ちました。オフビートな笑い、なんて言っていたように記憶しています。ですが、僕にはハズしていると感じました。
  それともう一つ、何処かのネット記事で、「音響は石井さんにお任せしました」との小池監督のコメント読みました。声の演出、演技もキャラクターを深める意味で大切な要素です。声の演技は、全身を使った演技とまた違ったものです。有名な俳優が声優をやっても、何か違和感を感じるのは、その差を埋められていない場合でしょう。声優は声だけゆえに、その技術は演じ手のオーラだけでは誤魔化せないものかと思います。JP役の木村拓哉さんにしても、フリスビー役の浅野忠信さんにしても、今回の演技は不満が残るものでした。そうならない様に演出側で何か出来なかったのかなぁ、とも思います。

最後のダサさ
  キャラクターに対して、引っかかりが多かった中、これは個人的な好みかも知れませんが、ヒロインのソノシーは魅力的に写りました。声を演じた蒼井優さんには違和感を感じなく、絵柄もかわいい上に、風呂上りのリラックスシーンもあって、彼女には満足しました。
  途中、JPの回想シーンで少しずつソノシーへの想いが見えるくだりは、深みが無いものの、悪くないなぁ、と思いました。が、JPと同乗して以降の、ベタベタした感じはいただけません。そして、エンディング直前のお約束的なカットとキャプション…。映画は最後のシーンでその作品自体の印象が決まってしまうのに、スタイルリッシュなオープニングタイトルに対して、非常に残念なラストカットでした。

バランスの悪さ
  期待が大きかったので、見終わって直後は、少し落ち込んでしまいました。7年という時間を聞いていたので、余計にそう思ったのかも知れません。鑑賞してから、少し経ちます。なぜ、こうなっているのか、少し考えてみました。一言で言えば、バランスの悪さなんだろうと思います。話の薄い密度の割にキャラクターの数が多い事や、本筋のレースを派手にしたい作者の気持ちに対してその必然性が薄かったり、キャラクターの濃さに対して、それが上手くストーリーに生きていなかったり説得力がなかったり、レースシーンの作画の密度に対してドラマの薄さとか。力をかけている部分と、安直にやっているように見える部分が、はっきりと見えてしまうと、こうなってしまうのかな、と思います。

音楽のカッコ良さ
  作画のテンションはレースシーンになると格段に上がります。が、激しく動く作画に合っている「音楽 ジェイムス下地」がテンション上げに非常に大きく寄与していると感じます。予告編を初めて観た時に、映像もさることながら、音楽が良いなと思いました。トランスというのか、ちょっとオシャれな感じの音楽。リズムを少しずつ上げていく高揚感。後半のレースシーンでは、映像とのシンクロ率が下がって、というか、映像側の統一感が崩れてしまって、冒頭レースほどに乗れなかったのですが、サントラは単体CDでも買いかと思います。

『走る男』なのか
  映画の終盤、チャンピオンとのタイマンシーンがあります。チャンピオンのマシンヘッドやJPのスピードの限界を超える、という感じの表現が川尻善昭監督の『迷宮物件』の『走る男』に似ているな、と感じました。こちらはレースやスピードをストイックな感じに表現しています。ストーリー的には良く見えない部分もあります。しかし、スピードを求める男の狂気が燃える車に上手く表現されていて、印象に残るものでした。何処かのインタビューで小池監督は川尻さんの名前を何度か出しています。ひょっとすると、少しは意識されているのかな、と思ったりもします。

注力すべし?
  しかし、今回は色々とまとめきれずにバランスを欠いた作品になってしまったようです。キャラクターの数も減らし、ストーリーも散漫にならないように、メインストーリーに絞って、深みを出して欲しかった。作画に対する情熱を脚本や演出にも分けて頂きたかった。稀有な才能、でも、それが作品に生きるようにして欲しい。金田伊功さんが『バース』を監督した後、ジブリに移った事について、ご自身の作画を生かせる演出を求めた、と仰っと聞いたことがあります。小池さんにとっての石井さんが、金田さんにとっての宮崎さんと言えるのか、演出として学べるものがあったのか、悲観的になってしまいます。


でも、期待しちゃいます
  国内での興行結果もですが、海外での評価によって、次の可能性が高くなるかも知れないです。むしろ、海外受けしちゃうかも知れません。次、期待したいです。また、7年とか、8年とか、かかってしまうかも知れませんが…w

ちょっと映画館の事も
  観たのは映画の日で、ヒューマントラストシネマ渋谷にて。この映画館初めてだったのですが、人通りの少し落ち着いた場所にあって、ビル自体もオシャレで、好きな感じです。これまで何度か通りは通っていましたが、気づいていませんでした…w。でも、同じビルのテナントも良い感じで、特に、『factory OUTLET』はもっと人が集まっても良いのに、と思うぐらいセンス良さ気な雑貨が沢山ありました。
  そんな風に周囲が見れたのも映画終了後で、何だかんだのバタバタで、結局、映画館では最初の数分が観れませんでした。後日、偶然ツタヤで無料のプロモーションDVDを発見して、それでフォロー出来たと思っていますが。

  広告ですいません。サントラはいい出来のようです。たぶん、僕も買います。どこかで試聴が出来るといいんですけどね…。